IFRS支援・会計アドバイザリー

新リース会計基準の実務負荷 ― 日本基準ならではの実務負担への配慮 ―

― 日本基準ならではの選択肢 ―

新リース会計基準への対応では、契約を洗い出し、リースに該当する契約や財務諸表への影響を把握した後、「どのような会計処理を採用するか」という会計方針を決めていくことになります。

新基準では、借手は原則としてリースについて使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上します。しかし、すべてのリースについて同じように複雑な計算が必要になるわけではありません。

日本基準には、IFRS第16号との整合性を図りながら、企業の実務負担にも配慮した、日本基準ならではの選択肢が設けられています。

従来の「300万円基準」を継続できる

代表的なのが少額リースです。

少額リースや短期リースについては、使用権資産とリース負債を計上せず、リース料を費用として処理することができます。

日本基準では、従来から使われてきた**「1契約当たりのリース料総額300万円以下」**という基準を、少額リースの判定方法として引き続き選択できます。

一方、IFRS第16号と同様に、「新品だった場合の資産価値が少額かどうか」で判断する方法も選択でき、この場合は5,000米ドル程度が一つの目安とされています。

これまで所有権移転外ファイナンス・リースについて300万円基準により賃貸借処理を行ってきたものは、新基準でも少額リースとして同様の処理を継続することが可能です。

従来の実務をできるだけ活かせるようにした、日本基準の特徴の一つです。

オンバランスするリースにも簡便な方法

少額リースに該当せず、使用権資産とリース負債を計上する場合にも簡便な方法があります。

原則的には、将来のリース料を現在価値に割り引き、その後も元本と利息を区分して計算します。しかし、使用権資産総額の重要性が乏しい場合には、利息相当額を区分せずに処理する「利子込法」や、利息相当額をリース期間にわたって定額で配分する方法を選択できます。

重要性の判断には「10%」という目安があります。具体的には、会計上決定した借手のリース期間に基づく未経過リース料の期末残高が、当該未経過リース料と有形固定資産・無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10%未満である場合です。

少額リースや短期リース、原則的な利息法を適用するリースなどは、この判定対象から除くことができます。

つまり、すべての契約について一律に精緻な計算を行うのではなく、会社全体への影響を踏まえて会計処理を設計できるということです。

日本独特の「再リース」にも配慮

もう一つ特徴的なのが「再リース」です。

車両や複合機などでは、当初のリース期間終了後、当初の月額リース料程度の年間リース料で、1年間の再リースを行うことがあります。

新基準では、一定の場合、この再リース期間を当初のリース期間に含めず、別のリースとして会計処理することが認められています。

日本特有の商慣行を踏まえ、国際的な比較可能性を大きく損なわない範囲で、追加的な実務負担を抑えるための取扱いです。

IFRSに近づけながら、日本企業の実務にも配慮

このように日本基準には、

  • 300万円基準による少額リース
  • 重要性が乏しい場合の利子込法等
  • 日本特有の再リースへの対応

など、IFRS第16号にはない取扱いが残されています。

さらに、少額リースについては費用額の注記も求められていません。 開示によって得られる情報の有用性と、その情報を作成するための実務負担とのバランスにも配慮されています。

新リース会計基準への対応では、対象契約を網羅的に把握し、適切に会計処理することが基本です。しかし、そのためにすべての契約を一律に扱う必要があるわけではありません。

まず全体像を把握し、重要性や基準が認める簡便的な取扱いを踏まえて、会計方針と業務プロセスを設計する。

これが、新基準への対応を必要以上に複雑にせず、適用後も継続できる仕組みをつくるためのポイントと考えます。

なお、日本基準とIFRS第16号との相違点はこのほかにもありますが、本稿では、実務負担への配慮という観点から、日本基準に設けられた借手リースの特徴的な取扱いを取り上げています。