新リース会計基準におけるリース期間の検討では、継続利用の必要性を説明できても、具体的に何年とするかの判断が難しい場合があります。事業上重要な拠点であり、相応の設備投資も行っている。しかし、そのことから、どこまでの延長が合理的に確実といえるのでしょうか。
判断にあたっては、継続利用を促す経済的インセンティブを把握したうえで、想定する期間について、延長オプションを行使すること、又は解約オプションを行使しないことが合理的に確実かを評価する必要があります。適用指針の不動産に関する設例は、この判断過程を具体的に示しています。
利用の見込みと「合理的に確実」
企業会計基準適用指針第33号BC29項は、「合理的に確実」が相当程度高い蓋然性を示すとしています。また、BC30項は、経営者の意図や見込みのみによって期間を決めるのではなく、経済的インセンティブを生じさせる要因に焦点を当てる考え方を示しています。ASBJ:適用指針第33号BC29~BC30項
したがって、「移転予定がない」「長期利用を想定している」という説明には、その見込みを裏付ける経済的な理由と、当該理由がどの期間の判断を支えるかという検討が必要です。過去の更新実績も参考になりますが、過去と同じ期間をそのまま将来に当てはめることには慎重な評価が求められます。
戦略的に重要な店舗でも、期間には判断の境界がある
設例8-3では、戦略的に重要な店舗について、5年、10年、20年の利用シナリオを検討し、リース期間を10年としています。5年後の部分的なリニューアルは実施しても、10年後の全面的な設備再設置まで行うかは、費用や経済状況に左右されるためです。ASBJ:適用指針第33号・設例8-3(9)~(12)
この設例を読むうえで重要なのは、店舗の戦略的重要性と追加投資の必要性を併せて評価している点です。戦略的に重要であることは、一定の追加投資を負担してでも利用を継続する理由になります。しかし、それによって、将来のあらゆる投資を伴う延長まで合理的に確実になるわけではありません。
また、設備の使用可能期間をリース期間に機械的に採用しているわけでもありません。その期間までの利用と、その後の再投資を伴う利用について、それぞれ延長が合理的に確実かを判断した結果として、期間を決定しています。
解体コストと建替えコストを、異なるシナリオで評価する
設例8-4では、借地上の建物について、20年までの利用と20年超の利用を検討しています。途中解約時の除却・解体コストと転貸予定を踏まえ、20年までは解約しないことが合理的に確実と判断する一方、20年超は建替えコストを考慮し、合理的に確実ではないと判断しています。ASBJ:適用指針第33号・設例8-4(8)~(12)
ここでは、利用を終了すると生じるコストと、利用を続けるために必要となるコストが、異なる期間の判断に作用しています。既存の建物を利用できる期間は、解体に伴う負担が解約を抑制します。一方、建替えが必要となる段階では、新たな投資を負担してまで土地の利用を継続するかが問われます。
自社事業の収益が計画を下回っても、建物を転貸して利用する予定が、借地契約を解約しないと判断する根拠となっています。現在の事業の継続見込みに加え、資産をどのように利用し続けるかまで検討している点に、この設例の特徴があります。
シナリオの比較と、合理的確実性の判断
両設例から得られる実務上の示唆は、事業上の重要性や投資額を列挙するだけでなく、それらを具体的な利用シナリオに結び付けることです。
例えば、既存設備を利用する期間、部分的な改修を伴う期間、全面的な更新を伴う期間では、継続の判断に影響する事情が異なります。現実的に想定し得るシナリオを設定し、各シナリオについて、契約条件、投資の内容、解約に伴うコスト、事業上の位置付け等を総合的に評価することが考えられます。
ただし、相対的に継続の可能性が高いシナリオを選ぶだけでは十分ではありません。採用する期間について、延長又は非解約が「合理的に確実」という水準を満たすかを判断する必要があります。費用の大小やシナリオ間の比較は、その判断を支える分析です。
検討結果には、採用した期間を支える根拠と、それを超える期間について合理的に確実と判断しなかった理由を残すことが有用です。「継続利用を見込んでいる」という説明から一歩踏み込み、経済的インセンティブと具体的な期間、そして合理的確実性の判断を一貫して結び付けることが、リース期間の結論を支えます。