― 貸手・サブリースにも設けられた日本基準ならではの選択肢 ―
新リース会計基準では、借手の会計処理が大きく変更される一方、貸手の会計処理については、リースの定義・識別や収益認識基準との整合性を図る点を除き、従来の日本基準の考え方が基本的に引き継がれています。
もっとも、貸手にとっても、契約の中にリースとサービスが含まれる場合の区分や、ファイナンス・リースにおける利息計算など、一定の実務対応が必要になります。
また、サブリースについては、原則的にはヘッドリースとサブリースをそれぞれ別の取引として会計処理することになります。
こうした中、日本基準には、財務諸表の有用性を大きく損なわない範囲で、貸手や中間的な貸手の実務負担に配慮した取扱いが設けられています。
リースとサービスを分けなくてよい場合がある
貸手が提供する契約には、資産のリースだけでなく、保守や管理などのサービスが含まれていることがあります。
原則として、貸手は契約の対価を「リースを構成する部分」と「リースを構成しない部分」に区分し、それぞれを別々に会計処理します。
しかし、日本基準では、
・リースを構成しない部分が収益認識基準の対象であり、
・リース部分とサービス部分の収益を計上する時期・パターンが同じ
・リース部分がオペレーティング・リースに分類される
という要件を満たす場合には、契約ごとに両者を分けずにまとめて会計処理することができます。
リースが契約の主たる部分であれば、全体をオペレーティング・リースとして処理し、それ以外の場合には、収益認識基準に基づく一つの履行義務として処理します。
ASBJは、この取扱いについて、リース部分とサービス部分を分けても分けなくても収益計上額が変わらない場合にまで詳細な区分を求める必要性は高くないとして、適用上のコストと複雑性を低減する観点から設けたものと説明しています。
すべての複合契約について機械的に対価を分解するのではなく、会計処理の結果が実質的に変わらない場合には、より簡便な処理を選択できるということです。
重要性が乏しければ、貸手も複雑な利息計算を省略できる
ファイナンス・リースでは、貸手はリース料に含まれる利息相当額を、原則として利息法により各期に配分します。
この場合、期首のリース投資資産やリース債権の残高に応じて金融収益を計算するため、契約ごとの返済スケジュールを管理する必要があります。
しかし、日本基準では、貸手としてのリースに重要性が乏しい場合には、利息相当額をリース期間にわたり定額で配分することができます。
重要性については、未経過の貸手のリース料と見積残存価額の合計額が、それらと営業債権の期末残高との合計額に占める割合が10%未満であることが一つの基準となります。
ただし、この簡便的な取扱いは、リースを主たる事業としている企業には適用できません。
本業とは別に、設備や金型、不動産などを貸手としてリースしている企業にとっては、リースの重要性が低い場合にまで契約単位で精緻な利息計算を求めないという、実務的な取扱いといえます。
サブリースにも、日本基準独自の例外
サブリースとは、例えば、A社から物件を借りたB社が、その物件をさらにC社に貸す取引です。
この場合、B社はA社との関係では借手であり、C社との関係では貸手となります。
原則的には、B社はヘッドリースについて借手として使用権資産とリース負債を計上し、サブリースについては貸手としてファイナンス・リース又はオペレーティング・リースの会計処理を行います。
しかし、日本基準では、一定のサブリースについて例外的な取扱いが設けられています。
その一つが、中間的な貸手がヘッドリースについて実質的にリスクを負っていない場合です。
例えば、
・サブリース先からリース料を受け取らなければ、ヘッドリースの貸手への支払義務も生じない
・ヘッドリースの支払額が、サブリースで受け取る金額の一定割合として決められている
・中間的な貸手が、サブリースの契約条件や借手を決める権利などを持っていない
といった要件をすべて満たす場合です。
この場合、中間的な貸手は、ヘッドリースについて使用権資産とリース負債を計上せず、受取リース料と支払リース料の差額のみを損益として計上することができます。
ASBJは、IFRS第16号にはこのような例外が設けられていないことを明示したうえで、我が国の不動産取引等の実態を踏まえ、国際的な比較可能性を大きく損なわない範囲で例外を設けています。
従来からの「転リース」の処理も継続
もう一つ、日本の実務を踏まえて残されたのが「転リース取引」です。
転リース取引とは、原資産の所有者から資産を借り、それと概ね同一の条件で同じ資産を第三者にリースする取引です。
一定の要件を満たす場合、中間的な貸手は、貸借対照表上はリース債権又はリース投資資産とリース負債の双方を計上します。
一方、損益計算書では、受取リース料と支払リース料をそれぞれ売上高、売上原価、支払利息などとして総額表示するのではなく、両者の差額を「転リース差益」などの手数料収入として各期に配分することができます。
この取扱いは従来の日本基準にも存在していたものであり、新基準でも変更せず引き継がれました。
ASBJは、その理由の一つとして、原則的なサブリース会計を適用することによる財務諸表作成者の負担の増加への対応を挙げています。
原則を理解したうえで、実務に合った処理を選択する
このように貸手・サブリースについても、
・オペレーティング・リースにおけるリース部分とサービス部分の一体処理
・重要性が乏しい貸手リースの利息相当額の定額配分
・リスクを負わない中間的な貸手のサブリースに対する例外処理
・従来からの転リース取引の会計処理
など、実務負担に配慮した取扱いが設けられています。
特にサブリースでは、契約を形式的に二つのリースとして処理するだけでは、取引の実態に合わなかったり、実務負担が必要以上に大きくなったりするケースがあります。
まず取引の実態と原則的な会計処理を確認したうえで、日本基準が認めている例外的・簡便的な取扱いを適切に選択する。
借手の場合と同様、これが新リース会計基準への対応を必要以上に複雑にせず、適用後も継続可能な業務プロセスを構築するうえで重要になると考えます。
なお、日本基準とIFRS第16号との相違点はこのほかにもありますが、本稿では、実務負担への配慮という観点から、日本基準に設けられた貸手及びサブリースの特徴的な取扱いを取り上げています。