新リース会計基準への対応では、契約の収集、リース期間の見積り、使用権資産・リース負債の計算、システムへの登録など、多くの作業が想定されます。しかし、詳細な計算に着手する前に整理したいのが、短期リース・少額リースに関する簡便的な取扱いです。日本基準には、企業の実務負担に配慮した選択肢があります。その活用方針によって、導入時だけでなく、適用後の継続的な管理や注記の負担も変わります。
■不動産でも少額リースになり得る
少額リースというと、パソコンや事務機器を思い浮かべるかもしれません。しかし、日本基準のいわゆる「300万円基準」は、原資産そのものの価格で判定する方法ではありません。企業の事業内容に照らして重要性が乏しく、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースを対象とします。借上社宅や従業員用駐車場も、要件を満たせば対象となり得ます。
適用指針第22項(2)では、①この300万円基準を踏襲する方法と、②新品時の原資産の価値が少額であるかによる方法のいずれかを選択し、首尾一貫して適用します。②はIFRS第16号と同様の方法であり、IFRSには①に相当する300万円基準はありません。このため、IFRS適用企業が日本基準の個別財務諸表との処理差を抑えるには、②の選択が合理的です。一方、IFRSへの移行を予定していない企業では、借上社宅や従業員用駐車場などの不動産にも適用を検討できる①を含め、自社の契約構成に適した方法を選ぶことが重要です。この選択は、その後の会計論点の検討範囲や実務負担に影響するため、早期に決めるべき会計方針といえます。
■契約期間で判定するという選択肢
第23項では、300万円基準の判定に用いる期間を、借手のリース期間に代えて、契約に定められた期間とすることが認められています。
例えば、月額10万円、契約期間2年の借上社宅であれば、契約期間に対応するリース料は240万円です。更新によって長期間利用する見込みがあっても、契約期間で判定する取扱いを採用すれば、金額要件を満たします。事業内容に照らして重要性が乏しいことも確認できれば、少額リースとして費用処理できます。
従業員用駐車場も、比較的小規模な区画を個別に借り、1年又は2年ごとに更新する契約では、契約期間のリース料が300万円以下となるケースが考えられます。こうした契約が多い企業では、少額リースの適用により、詳細な期間見積りやオンバランス計算の対象を大きく絞れる可能性があります。
■計算と注記の対象を先に絞る
実務では、リースを含む契約を把握したうえで、選択した会計方針に従い、少額リース・短期リースに該当する範囲を明確にします。短期リースは、リース開始日に借手のリース期間が12か月以内で、購入オプションを含まないリースです。契約が1年更新であることだけで、短期リースと判断するものではありません。
簡便処理の対象を整理してから、残る契約の期間、割引率、計算方法を検討する。この順序により、重要な契約の判断に人員と時間を振り向けられます。
注記にも効果があります。短期リースに係る費用の注記には、少額リースにも該当する契約の費用を含める必要はありません。少額リース該当分を除いた短期リース費用が限定的であれば、企業規模や財務諸表全体に照らして、当該注記の重要性が乏しいと判断することも考えられます。
■重要性を踏まえた運用を設計する
少額リース・短期リースに該当せず、オンバランスが必要となる契約についても、実務負担を軽減する選択肢があります。使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合には、利息相当額を控除せずに使用権資産・リース負債を計上する、いわゆる「利子込法」を適用できます。割引率の設定や利息の区分計算が不要となるため、オンバランス処理に伴う計算・管理の負担も抑えられます。
IFRSへの移行を予定していない企業では、日本基準で認められた簡便的な取扱いを十分に活用し、自社に適した対応範囲を設計することが合理的です。新基準の影響は、賃借料の総額だけでは測れません。簡便処理と重要性の検討を先に行い、計算・管理・開示に必要な作業を見極めることが、無理なく継続できる実務につながります。