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新リース会計基準の影響額はどう試算する? ― 契約調査から概算までの進め方 ―

― 契約調査から概算までの進め方 ―

新リース会計基準の適用準備において、経営者や関係部門から早い段階で求められるのが、「貸借対照表への影響はどの程度になるのか」という問いである。

しかし、影響額は現在の年間賃借料を集計するだけでは算定できない。リース期間、支払条件、割引率、短期リース・少額リースの取扱いなど、複数の前提を整理する必要がある。

本稿では、契約調査の結果を使用権資産及びリース負債の概算額へつなげるための進め方を解説する。

影響額は年間賃借料だけでは分からない

新リース会計基準では、借手は原則として、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上する。リース負債は、リース期間中に支払うリース料のうち、開始日時点で未払いのものを現在価値に割り引いて算定する。

したがって、試算にあたっては、少なくとも次の情報が必要となる。

  • 月額又は年額のリース料
  • 契約開始日及び契約終了日
  • 支払時期及び支払回数
  • 中途解約の可否及び解約条件
  • 延長・解約オプションの内容
  • 賃料改定やフリーレントの有無
  • 維持管理費等のサービス部分の有無
  • 原状回復義務等の有無

契約調査票には、契約金額だけでなく、これらの情報を契約単位で把握できる項目を設けることが重要である。

まずは試算の目的と精度を決める

影響額の試算に着手する前に、何のための試算かを明確にする必要がある。

適用準備の初期段階で、経営者への報告やプロジェクトの規模を検討するために行う試算と、会計方針を確定した後に行う適用開始時点の計算では、求められる精度が異なる。

初期段階の試算であれば、すべての契約について詳細な会計判断を完了させるのではなく、一定の前提を置いて概算することも考えられる。

一方、概算である以上、どのような前提を置いたのかを明確にしなければならない。特に、リース期間、割引率、少額リース等の範囲は、試算結果に大きな影響を与える。

例えば、次のように試算条件を整理しておくことが考えられる。

例えば、次のように試算条件を整理しておくことが考えられる。

項目初期試算における取扱いの例
対象会社連結子会社を含む、又は主要会社に限定
対象契約不動産、車両、設備、IT機器等
基準日直近月末又は適用開始予定日
リース期間契約期間を基本とし、重要な契約は個別検討
割引率契約区分や期間に応じた暫定的な利率
短期リース適用方針を仮定して除外又は別集計
少額リース採用予定の会計方針を仮定して除外又は別集計
未回答会社・部門前年実績等から補完するか、未反映として表示

試算結果だけを示すのではなく、このような前提条件と対象範囲を併せて示すことにより、経営者や監査人との認識のずれを防ぐことができる。

試算額を大きく左右するリース期間

影響額の試算において、特に重要となるのがリース期間である。

例えば、月額賃料が同じ契約でも、リース期間を2年と判断する場合と5年と判断する場合では、計上されるリース負債の金額は大きく異なる。

不動産賃貸借契約では、契約書上の期間が2年であっても、自動更新が繰り返され、継続使用が見込まれることがある。この場合、契約書の記載だけでなく、過去の使用期間、移転費用、建物附属設備の残存経済価値、代替物件の有無、将来の事業計画などを踏まえて、更新後の期間を含めるか検討する必要がある。

初期試算ですべての契約を個別に判断することが難しい場合には、不動産、車両、設備などの契約類型ごとに暫定的なリース期間を設定し、金額的重要性の高い契約について個別に検討する方法も考えられる。

また、不動産のリース期間を3年、5年、7年とした場合など、複数の前提による試算結果を比較すると、リース期間の判断が貸借対照表に与える影響を把握しやすくなる。

割引率と例外処理も試算に影響する

リース負債は将来のリース料を現在価値に割り引くため、割引率の設定も必要となる。初期試算では、契約期間、通貨、所在国、契約主体などに応じて、一定の暫定的な割引率を設定することが考えられる。

ただし、国内契約と海外契約、短期の車両リースと長期の不動産賃貸借契約などを、すべて同一の利率で計算することが適切とは限らない。どのような区分で割引率を設定したのか、前提を明確にしておく必要がある。

また、短期リース及び少額リースについては、一定の要件のもとで賃貸借処理を選択できる。日本基準では、リース契約1件当たりの金額が300万円以下のリースについて賃貸借処理を行うことができる取扱いも設けられている。

初期調査では、これらを直ちに対象から除外するのではなく、「資産・負債計上の対象」「短期リース」「少額リース」「追加確認が必要な契約」に区分して集計すると、会計方針による影響の違いを把握しやすい。

概算から段階的に精度を高める

適用準備の初期段階では、未回答の部門がある、契約書の最新版が確認できない、リース期間の判断が完了していないなど、必要な情報がすべてそろっていないことも多い。

そのため、最初から完全な金額を求めるのではなく、次のように段階的に精度を高める方法が現実的である。

  1. 賃借料明細等による全体規模の把握
  2. 契約調査結果を反映した契約単位の概算
  3. リース期間、割引率及び例外処理を反映した試算
  4. 契約変更等を反映した適用開始時点の本計算

各段階で試算額が変わること自体は問題ではない。重要なのは、どの契約を対象とし、どのような前提を用い、前回の試算からなぜ金額が変わったのかを説明できることである。

影響額を早期に把握することは、経営者への報告、予算への反映、財務指標への影響確認、システム導入範囲の検討にもつながる。まずは一定の前提に基づいて概算し、契約調査や会計方針の検討に応じて段階的に精度を高めることが、新リース会計基準への対応を円滑に進めるポイントとなる。